相続診断士の部屋

私たち相続診断士は、争う相族を減らし、円満な相続を普及する活動を実施しています。相続問題をタブー視せず、生前に家族で十分話し合い、円満に後世に想いを引き継いでいく社会創りのお手伝いをしています。その有効な方法の一つとして、笑顔相続ノートを推奨しています。

No.15 遺言書の概要と作成上の注意点

相続診断士・ファイナンシャルプランナーの佐藤です。15回目の今回は、遺言書の概要と作成上の注意点について解説します。

 

遺言書に関心を持つ人が増えています。遺言書を作成する理由は人それぞれですが、相続人同士が争わないようにしたいという、いわゆる「争族の防止」を理由に上げる人が多いようです。確かにきちんとした遺言書があれば、争いにはなりづらいでしょう。しかし、どのような遺言書であっても、遺言書を作りさえすれば良い、という訳ではないのです。

<遺言の概要>
遺言は、民法で定められた法律行為であり、法定相続分より優先されますので、遺言者の死亡後の相続財産の帰属について、親族間の紛争を回避するうえで重要な意味をもっています。遺言により、遺言作成者の意思を相続人に示すことができます。

 

*遺言を作成することで指定できる事項
相続分の指定
遺産分割方法の指定
遺産分割の禁止(死亡後最長5年間有効)
遺留分減殺方法の指定
遺言執行者の指定
成年後見人・未成年後見監査人の指定
遺産分割時の共同相続人間の担保責任の指定

 

<遺言ができる者>
遺言は、満15歳以上で、意思能力を持つ者であれば誰でも作成できます。たとえ未成年者であっても、法定代理人(通常は親権者)の同意は不要です。

 

<遺言の種類と特徴>

1、自筆証書遺言
遺言者が、遺言の全文、日付、氏名を自書し、押印する方式です。なお、代筆やワープロ等で作成することは認められていませんが、証人や立会人は不要です。

2、公正証書遺言
遺言者が口述し、公証人が筆記する方式です。その後、遺言者、証人が内容を確認し、公証人と共に署名、押印します。原本は公証役場で、正本は遺言者が保管します。なお、証人は2人以上必用です。

3、秘密証書遺言
遺言者が、作成した遺言書に署名、押印して封印し、証人、公証人の前で申述する方式です。代筆や、ワープロ等での作成も認められていますが、公証人の他、証人が2人以上必用です。

 

<遺言書を発見した場合に注意すること>
自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した人、または保管していた人は、相続開始後に遅滞なく家庭裁判所に提出して、遺言の検認手続きを行う必用があります。
検認とは、遺言書の偽造などを阻止するために行う証拠保全手続きのことで、どのような遺言があったかを記録するものであり、遺言の有効性や、遺言の内容について裁判所が認めるものではありません。
なお、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人の立ち合いのもとで開封しなければならず、勝手に開封した場合は過料に科せられます。
一方、公正証書遺言は、公証役場で保管されていることから偽造や変造の恐れがないため、検認の手続きは不要です。

 

<遺言の撤回と変更>
遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部、又は一部を撤回することができます。なお、前の遺言が後の遺言と抵触する時は、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。
又、遺言者が、故意に遺言を破棄した時は、その破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされ、遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した時も同様です。

 

<遺言書の内容を確実に実行させるためには>
遺言書を書くときは様々な事態を想定し、漏れのないように記載することが重要です。法的な要件だけではなく、遺言書の内容がスムーズに実現できるよう検討して置く必要があります。

せっかく遺言書を残しても、その遺言が内容通りに実行されなければ何の意味もありません。その為には、予め遺言執行者を定めておく事も一つの方法です。
遺言執行者は、「未成年者」、「破産者」以外であれば誰でもなれます。必ずしも専門家である必用はありません。とはいえ、遺言者の相続が発生した後の手続きになりますから、少なくとも遺言者より若く、健康な人を選ぶ必要があるでしょう。
また、複数選任してもかまいません。ただしその場合は実務上の負担を減らす為、それぞれ単独で手続きできる旨の規定を入れて置くと無難かも知れません。

 

<予備遺言を考慮しよう>
一般的には、相続は世代順に発生します。しかし、親より子が先に死亡する可能性も否定はできません。例えば、自宅不動産は長男に相続させる、という遺言書を残したとします。その後、もし遺言者よりも長男が先に亡くなったとしたら、長男の子に自動的に権利がうつる訳ではありません。こうしたケースでは、その他の相続人が全員で話し合って、誰が自宅不動産を相続するのかを改めて決めなければならないのです。
この場合、遺言者より先に長男が死亡していた場合は、長男に相続させる筈だった財産は長男の長男に相続させる、というような文言を記載しておけば、遺言者の相続時に長男が生きていれば長男のものに、仮に長男が死亡していた場合は、長男の長男が引き継げることになり、こうした記載を予備遺言と言います。予備遺言とは、不測の事態に備えて書いて置く遺言書の補足事項と理解して良いでしょう。

 

<包括遺贈では意味がない>
遺言書があったとしても、遺産分割協議が必要になったり、他の相続人の協力が必要になったりするケースもあります。「包括遺贈」で書かれた遺言です。
包括遺贈とは、長男へ全財産の3分の2、二男へ全財産の3分の1を相続させる、といったように、割合を指定した遺言書のことです。包括遺贈で書いた遺言でも、法的に無効という訳ではありませんので、公正証書遺言でも作成できてしまいます。
しかし、この遺言では、具体的に誰に何を名義変更するのか一切わかりませんので、結局、遺産分割協議が必要になり、かえってこじれてしまう危険すら生じかねません。手続きを簡単にするどころか煩雑にしてしまっては、本末転倒と言うしかないでしょう。

 

<付言事項を記載しよう>
単にどの財産を誰に相続させる、といった内容だけではなく、想いを伝える一文を加えるとより遺言の効果が期待できます。
例えば、「先祖代々受け継がれてきた自宅は、お墓と一緒に長男に守って欲しい。コツコツ貯めた1,000万円は、次男に大切に使って欲しい。いつまでも兄弟仲良く助け合って欲しい」などがその例で、これを付言事項といいます。
人は一般的に、故人の想いに納得すればそれに従い、遺志がわからなければ自分の権利を主張します。相続内容だけを記載するのではなく、想いを付言事項として託すことにより、遺志はより明確に伝わるでしょう。

 

<まとめ>
遺言書の作成は、単に見本を見て自分で書いただけでは、必ずしも十分とは言えない場合もあります。中途半端な遺言を残した結果、争族を防止するどころか、かえって火種になってしまったり、手続きがかえってややこしくなってしまうことも有り得ることを覚えておきましょう。その遺言を書いた結果、相続発生後どうなるのか、これをしっかり認識したうえで、真に遺族の為になる遺言を残せるように心掛けましょう。

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