FP&相続診断士の部屋

私たち相続診断士は、争う相族を減らし、円満な相続を普及する活動を実施しています。相続問題をタブー視せず、生前に家族で十分話し合い、円満に後世に想いを引き継いでいく社会創りのお手伝いをしています。その有効な方法の一つとして、笑顔相続ノートを推奨しています。

No.16 公的年金制度に絡む誤解

ファイナンシャルプランナー・相続診断士の佐藤です。16回目の今回は、公的年金制度に絡む誤解について所見を述べてみます。

 

書店の新刊コーナーを除くと、将来の年金不安や、それを補うための資産運用に関する書籍が所狭しと並んでいます。公的年金だけでは毎月約5万5千円、30年では大凡2,000万円弱不足すると指摘した金融庁の報告書や、将来の公的年金所得代替率が、現在より5割低下することもあり得るとした、厚生労働省公的年金制度の財政検証結果が影響しているのでしょう。

 

しかし、上記2点だけを敢えて全体の文意から切り離し、過剰に不安を煽っている嫌いはないでしょうか? 本質は、経済的によりゆとりのある老後を過ごすためには、公的年金だけに頼るのではなく、ある程度の自助努力が不可欠で、そのためには金融リテラシー必用であることを指摘したものであり、決して年金制度の破綻を警告したものではありません。また、年金の受給額そのものは、実は懸念されている程低下することはなく、こうした誤解を除き、正確に理解する必用があります。

 

第一に、2,000万円不足問題にしろ、所得代替率5割低下懸念にしろ、その前提としているモデルケースは、40年間厚生年金に加入して働く夫と、専業主婦の夫婦を想定したものです。このモデル世帯が65歳時点で受け取る夫婦二人の年金月額は、2019年度の平均で約22万円、これを現役の平均手取り賃金である35.7万円と比較して試算したものに過ぎません。しかし、既に年金を受給している世代ならいざ知らず、現役世代でこのモデルケースに該当する世帯が、果たしてどのくらい存在するでしょう? その是非は別にして、現役世代は共稼ぎの方が寧ろ一般的と言っても過言ではないでしょう。

 

次に、財政検証では、経済の状況が異なる6パターンを前提に、今後公的年金所得代替率がどう変わるかを試算しています。例えば、実質経済成長率0%、物価上昇率年0.8%、賃金上昇率年1.6%というやや厳しめの前提を例に、現在45歳の人の将来の年金をみると、受給開始は2039年度、平均手取り賃金は、賃金上昇が20年続く前提のため40万円、年金受給額はマクロ経済スライドで抑制されて21万円と試算しています。

この21万円の意味ですが、物価上昇を割り引いて2019年度の物価に換算した金額のことです。つまり、所得代替率でみると53%に低下していますが、実質の購買力では現在の22万円から21万円へ微減となるだけなのです。しかも、実質経済成長率0%という前提においてすらです。逆に、実質経済成長率年0.4%という、現実にほぼ則した前提での試算によると、受給開始後30年で所得代替率は41%に低下していますが、年金額は24万円と2万円増えています。決して所得代替率の低下=年金額の減少ではないこと、また、当然のことですが、前提の如何により結果は大きく変わり得ることを理解しておく必要があります。

 

所得代替率は、現役世代と比べた年金受給世代の暮らし向きを数値化するには有効ですが、年金受給世帯の購買力をみるには、実際の年金受給額の方が適しています。また、年金財政検証の結果によると、年金の受給額自体は所得代替率ほど大きくは減少していません。むしろ、今後も老後をある程度支え続けることを示していると考えるべきでしょう。

つまり、重要なことは、経済全体と実質賃金を上向かせる政策と努力ということです。過度に不安がらず、将来の年金額が自分の想定する生活には不足すると思われる分は、自助努力で備えるという適切な老後の資金設計こそが本質ではないでしょうか。

 

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ファイナンシャルプランナー 相続診断士 BPOプランナー
 共生プランニング代表 佐藤 喜三男

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 ライフプランニング、相続診断・対策、他、資産・生活設計全般
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